スポーツ疾患のリハビリテーション

スポーツリハビリテーションの理念

近年、スポーツを生涯にわたって楽しむ方が多くなっています。こうした背景から、スポーツ人口の増加に伴いスポーツによる様々な傷害(以下スポーツ傷害)が多く発生しています。
スポーツ傷害とは、一度の外力によって生じるスポーツ外傷と、度重なるストレスによって引き起こされるスポーツ障害の総称です。
当院では1980年本邦初のスポーツ整形外科を発足以来、スポーツ傷害のリハビリテーションを積極的に行っており、トップアスリートから一般のスポーツ愛好家の方々まで、個々のニーズに応じたスポーツ復帰を目標にしています。

テーピング指導
図1 テーピング指導

具体的には、医師の診断に応じて、患部局所の炎症・痛みや各部位の関節可動域、筋力、アライメントなど詳細な評価を行い、さらに再発予防も踏まえた観点から、問題点を抽出します。その上で、治療方針や目標を説明して患部の状態に応じたエクササイズを処方します。また必要に応じて足底板(インソール)の作成、テーピング指導(図1)なども行なっています。

当院で多く診ているスポーツ外傷と障害

  1. スポーツ外傷
    膝前十字靱帯(ACL)損傷、アキレス腱断裂、半月板損傷、腱板断裂、反復性肩関節脱臼、骨折、捻挫などがあります。
  2. スポーツ障害
    野球肩、野球肘、脛骨疲労骨折、ジョーンズ骨折、オスグット病、などがあります。
上記のスポーツ傷害の中で、手術が必要な場合は、当院スポーツ整形外科で手術を行い、その後、当科で術後のリハビリが行われます。各疾患の術後のプログラムを下記に掲載しています。ご確認ください。
ただし、同様の疾患でも患部の状態は、合併損傷の有無やその処置内容によって異なります。当院では、大まかな術後プログラムはありますが、毎回必要な理学的な評価を行い、患者さんの個々の状態に最も適したリハビリテーションを提供することを心がけています。
以下に、当院で多く診ているスポーツ傷害のリハビリテーションについて簡単に紹介いたします。特に、膝前十字靭帯損傷および、アキレス腱断裂の手術件数は本邦最多レベルとなっています。

代表的な疾患の術後のリハビリテーションの実際

以下に、 膝前十字靭帯(ACL)損傷アキレス腱断裂腱板断裂反復性肩関節脱臼 の術後リハビリテーションについて、簡単に説明します。

膝前十字靭帯(ACL)損傷

スポーツ外傷の代表的な疾患で、受傷直後は、膝の腫れや痛みにより歩行が困難ですが、しばらくすると日常生活は問題なくジョギング程度はできるようになります。しかし、スポーツ時には、いわゆる膝崩れを起こす場合が多く、長期的にはスポーツ継続が困難となります。このためスポーツ復帰を考えた場合、原則的には手術を行っています。
当院では、関節鏡視下に自家腱移植による再建術を行っています。多くは半腱様筋腱・薄筋腱を用いていますが、競技種目や年代により膝蓋靭帯腱を用いる場合もあります。
以下の再建術後のリハビリテーションの流れを大まかに述べます。
術後、約1週間は部分荷重で歩行します(図2)。術後1週間で松葉杖が取れ、約10日間で退院します。入院中のリハビリテーションは、退院後の学校生活や就労に差し支えないよう、早く日常生活をスムーズに行えるようにする事に主眼をおいています。術後5週間まで屋外では膝装具をつけて生活します(図3)。術後約3か月間は、予期せぬ事故を回避するためにラッシュの電車で通勤・通学は避け、重い労作は禁止します。それ以外は、概ねすぐに元の日常生活を送ることができます。外来通院となってからは、担当医及び担当セラピストが患者さん個々の膝の状態をチェックしながら進めていきます(図4)。その後、ジョギングなどの基本動作から部分練習へと進み、スポーツ復帰へ向けてプログラムを進めていきます。術後5か月以降、定期的にバイオデックス(筋力測定器)を用いた筋力測定(図5)およびKNEELAX(靱帯測定器)を用いた移植靱帯の状態を評価(図6)し、運動許可の目安にします。スポーツレベルと種目に応じて術後6ヶ月から8ヶ月前後で徐々にもとのスポーツへ復帰します。ノンコンタクトスポーツでは術後6か月、コンタクトスポーツでは術後8か月を復帰の目標にしています。
部分荷重歩行 膝装具 膝の状態のチェック
図2 部分荷重歩行 図3 膝装具 図4 膝の状態のチェック
筋力測定 移植靱帯の状態を評価
図5 筋力測定 図6 移植靱帯の状態を評価

なお、術後リハビリの詳細は「 病気の話:膝前十字靱帯(ACL)損傷(断裂)の治療 〈診察~手術~リハビリテーションまで〉 」の項をご覧ください。

膝前十字靭帯再建術術後のリハビリテーションプログラム

アキレス腱断裂

スポーツ動作時の蹴りだし時に多く発生する怪我です。この怪我特有の「後ろから叩かれた感じ」がし、断裂部が凹んでいることから、ご自身で自覚されることが多いスポーツ外傷です。
本邦では保存療法と手術療法とに分かれますが、当院では手術療法を行っています。
損傷後、約2週以内に手術をする場合を新鮮例、2週以上経過した後に手術をする場合を陳旧例とし、手術方法が若干異なります。
当院では強固な腱の縫合をしているためギブス固定期間が短いのが特徴です。以下のアキレス腱断裂術後のリハビリテーションの流れを大まかに述べます。
術後約5日間はギブス固定し、体重はかけられません。その後、踵付きのギブスになり、体重をかけた歩行練習を行い、退院します(図7)。術後約2週間で関節の角度を制限する装具になり(図8)、足関節を動かす練習を開始します。
術後約2~3か月でジョギングを開始し、術後4か月で部分練習開始、5~6か月で元のスポーツに復帰を目標にしています。
かかと付きのギプス アキレス腱装具
図7 かかと付きのギプス 図8 アキレス腱装具

なお、術後リハビリの詳細は「 病気の話:アキレス腱断裂の治療(手術とリハビリテーション) 」の項をご覧ください。

アキレス腱断裂縫合術後のリハビリテーションプログラム

腱板断裂

腱板筋のトレーニング
図9 腱板筋のトレーニング

肩関節の腱板筋には4つの筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)があります。この筋肉は肩の深部にあるため、インナーマッスルと呼ばれます。この腱板筋は、肩を動かすためにとても大切な筋肉ですが、小さい筋肉であるため怪我をしやすい筋肉です。
腱板損傷は、スポーツ競技によって怪我の程度が異なります。野球などのボールを投げる競技では、腱板の炎症や損傷が起こりやすい特徴があります。また、スキーなどの転倒の多いスポーツや、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツでは、強い外力が加わることで腱板が断裂しやすい特徴があります。
腱板の炎症や軽度の損傷では、腱板のトレーニングを行い腱板の機能を再獲得させたり、腱板に加わる負担を軽減させたりするようなリハビリテーションを行うことによって症状の軽減を図ります(図9)。しかし、腱板が断裂してしまうと、リハビリテーションだけでは、症状の改善は難しいため、手術が必要となる場合があります

腱板修復術後のリハビリテーションプログラム

反復性肩関節脱臼

術後リハビリの様子
図10 術後リハビリの様子
肩関節はその構造的な特徴から脱臼を起こしやすい関節です。また、一度脱臼をしてしまうと、繰り返し脱臼を起こしやすい関節でもあります。肩関節の脱臼は、転倒して地面に手を着いた時や肩から地面に落ちた時に生じます。スポーツでは、ラグビーなど相手にタックルをするようなコンタクトスポーツで脱臼が生じやすいです。
数度の脱臼を繰り返した肩関節は、リハビリテーションだけでは、脱臼を完全に防ぐことは難しいとされています。このため当院では、肩の脱臼を防ぐための手術を行っています。その後、術後のリハビリを行い、患者さんと共に競技復帰を目指します(図10)。

肩関節脱臼術後のリハビリテーションプログラム



関東労災病院

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