頭部外傷(スポーツ外傷、慢性硬膜下血腫)

               
   
      脳神経外科 部長   杉山 誠
                 脳神経外科   立澤 孝幸
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7.頭部外傷(スポーツ外傷、慢性硬膜下血腫)
   
   頭部外傷の原因は様々です。交通事故、転倒、転落、スポーツ中の事故などの原因により当院へも数多く救急搬送受診されます。
頭痛やめまい、嘔吐、記憶障害、意識障害、手足の麻痺、言語障害、難聴、顔面神経麻痺、けいれん発作などが起こります。重症の場合命に関わる可能性があります。外傷による頭蓋内出血を調べるには,CT検査を行います。硬膜下血腫、硬膜外血腫、脳挫傷、骨折などが確認され、開頭手術が必要になることもあります。重い後遺障害が残ることも多く、社会復帰が困難になります。

受傷後に心配な症状があれば早急に当院の受診をお勧めします。
当院では24時間365日脳神経外科医が対応しております。
   
急性硬膜下血腫(脳の表面の出血) (出血は頭部CTでは白く見える)
   
開頭血腫除去術を行い,救命可能であった。血腫は除去され,脳表が見えている。



スポーツに伴う脳震盪について
 
脳震盪は頭部に直接あるいは間接的な衝撃が加わることで生じる多彩な症状からなる症候群です。
 その症状はめまいや頭重感などであることが多く、意識消失や健忘は必ずしも起こるわけではありません。
また、受傷直後のCTなどの画像診断でも異常所見は認められません。
 しかし、短期間のうちに繰り返し頭部を打撲することで急性脳腫脹や急性硬膜下血腫を生じ生命に関わってくることがある(セカンドインパクト症候群)ことが知られております。 そのため、日本脳神経外科学会と日本脳神経外傷学会は2013年12月16日付けで、 「スポーツによる脳損傷を予防するための提言」を共同発表し、スポーツに起因する脳損傷について、国民が知っておくべき5つの必須項目をまとめました (下記)
(1) スポーツによる脳震盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある。
(2) スポーツによる脳震盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある。
(3) スポーツによる脳震盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある。(セカンドインパクト症候群)
(4) そのため、スポーツによる脳震盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止し、競技・練習への復帰は、脳震盪の症状が完全に消失してから徐々に行う。
(5) 脳損傷や硬膜下血腫が生じたときには、原則としてコンタクト・スポーツへの競技・練習に復帰すべきではない。
     
受傷後の対応
  受傷後1~2日間は脳と体を休めて安静にしてください。テレビやコンピュータ、スマートフォンなどの使用も控えてください。一人にはならないでください。
  飲酒は禁止です。
  医師の指示なしに薬は飲まないでください。特に、睡眠薬やアスピリンなどの抗炎症薬、鎮痛薬は控えて下さい。 ただし、高血圧や糖尿病などで従来から使用中の薬は継続して下さい
  運転は医師の許可を得るまで禁止です。
  運動やトレーニングは医師の許可を得るまで禁止です。
     
  症状が完全に回復するまでは運動は控えてください。少しでも症状が残っている状態で運動や試合に復帰することはセカンドインパクト症候群の危険性が高くなると考えられています。ラグビーやサッカーなどのぶつかり合うスポーツの場合は試合復帰前に脳外科医による診察を受けてください。
  運動への復帰は段階的復帰プログラム(GRTP、別記)に従ってください。復帰中に症状が再発した場合は段階を下げて、慎重に復帰をしてください。
     
  症状が悪くなってきた場合は脳神経外科を受診してください。
     
     
慢性硬膜下血腫
 
慢性硬膜下血腫とは
頭部外傷後慢性期(通常1~2カ月後)に脳を覆っている硬膜と脳との間に血腫が溜まることにより、脳が圧排されて様々な症状を呈する疾患です。
     
特徴
●  通常、頭部外傷(軽微なものであっても)の3週間後以降に発症する
●  頭部外傷があったかどうか分からない場合も存在する。(酔っていた、認知症であった、などの他、実際に外傷の覚えが全く無いにも関わらず発症する場合も)
●  50歳以上の男性に多くみられる
●  「大酒家」、「脳に萎縮がある(認知症、高齢など)」、「抗血栓薬を内服しているなど、出血傾向がある場合」、「シャント術を受けている」、「透析を受けている」、「癌が硬膜に転移している」などが危険因子として言われています
     
症状
 初発症状は軽い頭痛が多く、血腫が溜まるにしたがって、徐々に片麻痺(片側の上下肢に力が入りづらい)、認知症(呆け、意欲低下)、失語(上手く話せない)、痙攣などの症状が出現します。高齢者や、特に両側に血腫が貯留している場合、片側の麻痺症状は現れないこともあり、「なんとなく活気が無くなり、ベッドから起き上がれなくなった」という症状のみの場合もあります。
 若年者にも発症することがありますが、頭痛や嘔吐を中心とした頭蓋内圧亢進症状が中心として現れることが多いです。
     
診断
 頭部CTで診断はほぼ確実につきます。症状の原因として他の疾患が隠れている可能性(脳梗塞など)が考えられる場合や、血腫の境界がCTのみでは分りづらい場合などには、頭部MRIも確認することがあります。
     
治療法
 画像上血腫の貯留があっても、それによる症状が無い、あるいは非常に軽い場合には、内服を続けながら外来で経過観察をします。血腫があり、その圧排による症状が明らかな場合、手術を行います。実際には、画像上の圧排所見の有無や、写り方などの情報を総合して、治療方針を決定することになります。
     
手術
 当院では主に穿頭血腫洗浄術を行っております。局所麻酔下(痛み止めの皮下注射)と鎮静薬を用います。頭蓋骨に一円玉程度の穴を開けてドレナージチューブを挿入し、血腫を吸引した後に洗浄します。再発抑制目的に血腫腔内にドレーンを留置して手術終了とする場合がほとんどですが、これは通常術後1~2日目で抜きます。
 
左慢性硬膜下血腫のCT画像
左(術前)・・・・血腫により圧排され、正中が偏移している
右(術後)・・・・血腫が生理食塩水(画像では黒色)に置換され、圧排が軽減している。
      今後整理食塩水は自然に吸収され、圧排はさらに改善
 
術後の経過
 多くの場合、術後比較的速やかに症状は改善します。基本的には約一週間入院中の経過を見て、自宅退院あるいはリハビリテーション転院かを判断します。特に高齢者の場合、症状改善に時間がかかる場合もよくあります。
     
術後問題点について
● 慢性硬膜下血腫再発
比較的再発の多い疾患とされ、一般的には10%前後が再発するとされます。その後内科的治療でも血腫が減少せず、症状を呈すようなら、再手術を要します。
● 術後感染症
空気中の細菌が定着することにより、硬膜下膿瘍や髄膜炎の可能性があります。
● 術後痙攣発作
  洗浄の刺激により、特に高齢者で全身性痙攣を生ずる場合があります。   





(脳神経外科 著者:立澤 孝幸 H30.3.31まで在籍)

  
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