脳梗塞 t-PA、急性期血行再建、頚動脈狭窄症

               
   
          
        神経内科 部長 土屋 敦史
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3.脳梗塞
  t-PA、急性期血行再建、頚動脈狭窄症
           

 脳梗塞は脳の血管がなんらかの原因で詰まってしまい、それらの血管が支配する脳細胞が障害されます。障害された脳細胞が担当する脳機能が消失することにより症状が出現し、それらが壊死することにより後遺症が出現する病気です。
 脳梗塞の発症から数時間以内であれば、詰まった脳の血管を再開通させて出現した症状を回復させる可能性があります。血管の閉塞から血流の再開までの時間が早ければ早いほど壊死に至る脳細胞が少なくなるため症状、後遺症の程度が軽くなる可能性があります。
 このように脳梗塞の急性期に血行を改善させて症状の改善を目指す治療が急性期血行再建の治療と呼ばれています。
 血行再建の方法にはtPAという薬剤を静脈内に点滴する治療と、カテーテルを使用して血行再建を図る脳血管内治療があります。いずれの治療においても発症から数時間以内しか効果がないとされており、症状を発現してしまった患者さんについては可及的速やかに救急車を呼んでいただき当院に来院されることが必要です。最新の論文では可能な症例については両方の治療を行うことによってより後遺症を減らすことができるとされており、当院でも24時間365日体制でそれら治療法を行える体制を敷いています。

 薬剤を点滴して再開痛を目指す治療は組織プラスミノゲン・アクチベーター(tPA)という薬品を点滴で投与することで、体内で薬剤が血管を詰まらせている血栓にとりついて溶解させ、詰まった血流を再開痛するように働きます。詰まった血管の先にある細胞が完全に死んでしまっている場合は再開通した血流によって逆に出血してしまうこともあるため、来院時の頭部MRIなどの画像を確認し、患者さんの既往に出血のリスクが少ないことを確認して投与します。また、発症4.5時間以上経過していると出血のリスクが高くなり、再開通しても後遺症の改善が望みにくいため投与できません。

 最新の論文の結果では急性期のカテーテルなどを使用した血管内治療を適切な症例に対して行うことによって、後遺症の出現をより抑えることができるという結果が出されました。これにより欧米の脳卒中治療ガイドラインには急性期脳梗塞に対しては血管内治療を行うべきとされており、本邦でもそれに準じた治療が行われております。治療に使用する道具についても様々なものが発売されていますが、当院では最新の機器を取り揃え、治療適応の患者さんに対しては最善の治療を行っております。

実際の治療の流れ
実際の治療の流れ図

           

 来院時診察を行い脳梗塞の重症度を判定します。そして頭部MRI画像などで脳血管の閉塞の確認、脳細胞が完全に死んでいる状態ではないことを確認します。

脳血管が閉塞している状態で、閉塞血管の支配する脳細胞が完全に死んでいない状態

発症時の頭部MRI・MRA図
 
 
 閉塞血管を再開通させれば症状が改善する見込みがある症例の場合はtPAの投与、血管内治療を検討します。点滴治療を行う場合は点滴を行いながら血管内治療を行います。
 血管内治療は血管撮影室というところで脳血管内治療専門医が行います。鼠径部の動脈からカテーテルという管を閉塞血管の近くまで進めて、再開通専用の道具を使用して閉塞した血管を再開痛させます。当院では脳血管内治療専門医は2名在籍しており、他脳神経外科医、神経内科医の補助を得て治療にあたっております。再開通専用の道具は近年目覚ましく発達しており、当院でも日本で使用できる最新の機器を取り揃えて治療に当たっております。
           
血栓で詰まった血管を血栓吸引の機械で再開通させた
血栓吸引機械で再開通の図
 
 
血管が再開通することで脳梗塞の範囲が最小限で抑えられている
治療2日後の頭部MRI・MRA図
 
 
頚動脈狭窄症

頚動脈狭窄症とは
 脳は、左右の内頚動脈、左右の椎骨動脈の4本の血管から栄養を受けています。内頚動脈は頚部で頭の皮膚を主に栄養する血管である外頚動脈と頭蓋内を栄養する内頚動脈に分かれますが、その分岐部のところで、動脈硬化が原因で狭窄することによって頚動脈狭窄症をきたします。

症 状: 脳梗塞や一過性黒内障(片方の目が真っ暗になる症状)によって発症し、検査で発見される場合もありますが、近年脳ドックの検査で頚動脈超音波検査がおこなわれることも多く、その際に発見されることも増えています。
診 断: 頚動脈狭窄症を認めた場合、全身の動脈硬化性病変を有することが多く、必要に応じてほかに全身の血管に問題がないかを検査することが必要となります。様々な検査を組み合わせることによって脳梗塞、心筋梗塞や閉塞性動脈硬化症などを評価し、適切な治療を行えるようになるだけでなく、手術の合併症を減らすことにもつながります。
治療法: 頚動脈狭窄症が軽度の場合、まず保存的治療が優先されます。抗血小板剤の内服や、高血圧や糖尿病を治療しつつ頚動脈狭窄が増悪しないか外来にて定期的に画像検査を行っていきます。

 頚動脈狭窄症が高度の場合、脳梗塞を1-2割の方が起こすと言われていて、保存的加療に加えて頚動脈病変に対する外科的治療が必要となります。手術療法には、頚動脈内膜剥離術(CEA)と頚動脈ステント留置術(CAS)がありますが、病態に応じて適切な治療方法を選択することが必要となります。術前後にきちんとした内服加療、全身管理を行っていくことが脳梗塞の発症予防に重要となります。
 頚動脈狭窄症の患者さんは冠動脈疾患、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病を合併することも多く、必要に応じて当院の循環器内科、糖尿病内科と連携して治療にあたっていきます。


頚動脈内膜剥離術 (carotid endarterectomy: CEA)

頚動脈狭窄症に対する術前精査
 一般的にスクリーニングで行われることが多いのは、頚動脈エコーですが、高度の頸部頚動脈狭窄を認めた場合、3D-CTA、脳血管撮影にて狭窄度や狭窄の状況を精査します。3D-CTAは外来でも行えますが、脳血管撮影は検査入院が必要となります。手術が必要な可能性が高い場合、必要に応じて頭部MRI+A、頸部MRA、脳SPECT(脳血流の検査)、経胸壁心臓超音波検査、ABI、冠動脈3D-CTAなどの検査を行います。
           
MRI拡散強調画像図 頭部MRA図 頚部MRA図
     
頚部MRA図 MRI拡散強調画像図
       
左上:MRI拡散強調画像
中上:頭部MRA
右上:頚部MRA
左下:脳血管撮影
右下:SPECT(脳血流検査)


頸動脈内膜剥離術の実際
  手術は全身麻酔で行います。頚部の胸鎖乳突筋と呼ばれる筋肉の前側に沿って約7cm皮膚を切ります。神経や血管に注意しながら、頚動脈を露出していき、細くなった頚動脈を切開し内膜の剥離を行っていきます。当院では、血管の切開や縫合の際に血行を遮断しないように内シャントといわれるチューブを血管内に挿入し、脳への血流を保った状態で狭窄部位のプラークの剥離と摘出を行います。また、血流遮断によって脳梗塞にならないようにモニタリングを行いながら安全に配慮して手術を行っております。
顕微鏡を用いて肥厚し動脈狭窄の原因と成っている血管の内壁を剥離、摘出し、頚動脈を縫合して、血流が十分に改善していることと止血を十分に確認します。皮膚を縫合し、手術終了します。

     
皮膚切開の図
皮膚切開
 
術中画像    
頚動脈を露出図 シャントチューブを挿入図 摘出したプラークの図
頚部MRA図 MRI拡散強調画像図  
     
左上頚動脈を露出
中上シャントチューブを挿入
右上摘出したプラーク
左下術前の脳血管撮影
右下術後の3D-CTA、狭窄は改善している

手術後は、CT、MRI、3D-CTA、 SPECTなどの検査を行い、脳梗塞がでていないかどうか、狭窄が改善しているかどうか、脳の血流を評価します。経過に問題がなければ、7-10日で自宅退院となります。
 
  

関東労災病院

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