悪性脳腫瘍

               
   
          
        脳神経外科 立澤 孝幸
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1.悪性脳腫瘍

はじめに:
 脳は脳神経細胞だけではなく脳を包む膜や、脳を栄養する血管など多くの細胞がそれぞれ高度の役割を持って働くことで脳としての機能を果たしています。これらの細胞が異常に増殖し、浸潤あるいは圧迫し周辺の健康な脳の働きを障害し、生命を脅かしてくる重篤な病気が脳腫瘍です。 脳腫瘍は大きく分けると脳そのものから発生する原発性脳腫瘍と肺がんや乳がんなど体の他の部位に生じた癌が転移してくる転移性脳腫瘍に分けられます。原発性脳腫瘍は1年間に人口10万人当たり10人から12人とまれな腫瘍ではありますが、細かく分類(病理診断)すると100種類を超え、それぞれに適切な治療法があります。
また、小児から老人までどの年代においても発生し、それぞれに応じた適切な治療が必要となります。
良性の脳腫瘍は摘出することで治癒が期待しうるものですが、その成長速度も遅く、年余にわたりほとんど変化の見られないものや縮小してくるものもあるため、機能予後を重視したより低侵襲な治療や経過観察が選択肢に入ることもあります。一方、悪性のものは手術のみで根治させることは困難であり、放射線や抗がん剤などを用いた集学的治療が必要となります。

症状:
 脳には手足の運動や知覚、言語、視覚など多くの働きがありますが、前頭葉や後頭葉といった各部位ごとに、機能が分担されており、腫瘍が発生するとその部位に応じた症状が出現します。また、脳に傷がつくとてんかん発作の原因ともなりますし、頭痛や嘔吐、視力障害などの症状が起こってくることもあります。特に成人後に発生したてんかん発作は、腫瘍に伴うものである可能性が高いと考えられております。これらの症状に気づいた時は速やかに脳神経外科を受診してください。

検査:            
 脳神経外科医は、患者さんの症状をお聞きし神経学的所見をチェックすることで、頭蓋内における病変の部位と、どのような疾患であるかを概ね予測することができます。それを確認するためにCTやMRIなどの検査を行います。脳腫瘍においても他の部位の腫瘍と同様に可能な限り早期に治療を開始する方が良いことは自明ですので、受診後すぐに入院をお勧めすることもありますが、外来で可能な限りの検査を行い、入院期間を短くする方が良い場合もあります。

治療:
 脳腫瘍の最終診断は病理検査と言って、腫瘍そのものを摘出して、その細胞内の酵素の変化や細胞自体の形態的な特徴を顕微鏡で調べることで、診断されます。この診断には通常7~10日程度かかります。
画像診断の進歩のおかげで現在は術前にかなり正確に脳腫瘍が何であるかの予想はつきますので、良性の腫瘍に対しては、根治的な腫瘍摘出(全摘出)を目指した手術が行われます。しかし、悪性腫瘍では手術のみでは治癒は困難であり、術後に後療法として放射線治療や抗がん剤治療(化学療法)が併用されます。手術によりかえって腫瘍細胞を撒き散らしてしまったり、周辺の脳に障害を起こしてしまうことが予想される場合は、当院では高精度なナビゲーション機器により脳の深部に生じた脳腫瘍に対しても頭蓋骨に小孔を穿ち、ピンポイントで腫瘍細胞を採取し病理診断を行ない、それに従って適切な治療を行うように当院腫瘍内科と連携しております。

手術:
 脳腫瘍の手術においては病変部を取り残さずに周辺の健康な脳組織を傷つけないというギリギリの境界面で腫瘍を切除する必要があります。これを達成するため、ナビゲーションシステムや術中蛍光診断(5-ALA)、さらに感覚・運動刺激による誘発脳波モニタリングを活用し、可能な限り完全な摘出を目指しております。しかし、切除することで言語や視覚、運動など重要な脳機能に影響が出てしまう危険性が高いと判断された場合はあえて腫瘍組織を外科的には摘出せず、手術後の放射線治療や化学療法に期待することもあります。また、術中迅速病理診断を行い、悪性であった場合には腫瘍摘出面に抗がん剤の徐放剤を敷き、治療しております。
入院期間は腫瘍の種類により異なりますが、良性の腫瘍では術後7~10日程度です。しかし、悪性腫瘍であった場合は術後の放射線治療や化学療法が必要となりますので、病理診断に必要な期間も含め術後6~8週間程度の入院治療が必要となります。退院後は2~4週間ごとに外来通院をおこなっていただき、化学療法を継続する必要がありますが、可能な限り就労を継続していただくことを目指しております。
これらの治療は詳細な病状説明の上に成り立つものであり、患者側の希望を優先しております。さらに、残念ながら脳腫瘍が再発してしまったような場合には、患者さんのご希望により、国立がん研究センターなどで行われている新たな治療法の治験に参加していただくことも可能です。
また、セカンドオピニオンをご希望の場合は遠慮なくご相談ください。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) について

  脳腫瘍のうち頻度的に最も多い悪性腫瘍は悪性神経膠腫(WHO grade 3,4)であり、最も悪性の膠芽腫(WHO grade 4)においては5年生存率は10%以下と著しく低く、根治は困難です。当院においてはスタンダードな治療である手術、放射線療法、化学療法を基本としてはおりますが、適応のある患者さんに対してはホウ素中性子捕捉療法を行っています。
ホウ素中性子捕捉療法( BNCT )はあらかじめホウ素化合物を腫瘍細胞に取り込ませた上で、中性子線を照射することでホウ素原子核がリチウムとヘリウムの原子核に分裂(α崩壊)する際に放出されるアルファ粒子(ヘリウム原子核)とその反跳リチウム粒子線による殺細胞効果を期待する治療です。粒子線の飛呈が約14ミクロンと腫瘍細胞1個の大きさ程度であるため、腫瘍細胞をより選択的に攻撃できるという特徴が有ります。日本は世界で最も症例数が多く日本発の先端医療の一つです。当院においては2009年より、京都大学原子炉実験所の共同利用研究として高垣政雄教授(藍野大学)、宮武伸一教授(大阪医科大学)と協力し悪性神経膠腫に対して治療を行っております。

 
リンク先:ホウ素中性子捕捉療法(BNCT) 【http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/BNCT/】



(脳神経外科 著者:立澤 孝幸 H30.3.31まで在籍)  

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