抜歯のお話

              
   
          
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抜歯のお話

  歯を抜くなんて、想像しただけでも目を塞ぎたくなる光景です。
できるだけ歯は抜きたくないというのが普通の感覚だと思います。
            
 さて、わたしたちの外来ではその【歯を抜く=抜歯】を毎日毎日せっせと行っています。
よく、「あそこの歯医者に行くと歯を抜かれるからやめておけ」、などという噂が立つこともしばしばですが、私たち歯科医師は何も喜んで抜歯をしているわけではありません。当然何らかの原因があって、抜歯せざるを得ない状況になってしまったために、仕方なく抜歯をするのです。

  それでは、抜歯をしなくてはならない状況とはどんな時でしょうか?

まずはよくあるパターンを並べてみます。
歯槽膿漏が進行して歯がグラグラの場合。(図1)
虫歯が進行して、歯の根っこまで浸食してしまった場合。(図2)
治療歴がある歯の根っこが割れてしまった場合。(図3)
虫歯菌が歯の神経の空洞を通して、歯の根っこの先端部で炎症を起こした場合。(図4)
位置が異常な場所に萌出したために咬み合わせに参加せず、ただ歯ブラシがしにくかったり、歯茎の炎症を繰り返すような場合。(図5)

これらが、一般的な抜歯のイメージだと思います。そして私たち口腔外科医が最も経験する抜歯として、
親知らずや余分な歯(過剰歯)で、あっても役に立たないばかりか、隣の歯の虫歯や歯槽膿漏の原因になったり、隣の歯を押して歯並びを悪くしたり、正常な歯の萌出を妨げたり、歯の周りの組織に炎症を起こしたり、抜歯したほうが口の中の環境が良くなると考えられる歯。(図6)

図 1 図 2 図 3
抜歯のお話図1 抜歯のお話図2 抜歯のお話図3

図 4 図 5 図 6
抜歯のお話図4 抜歯のお話図5 抜歯のお話図6

その他にも、
矯正治療のために歯を動かすスペース作りのための便宜的な抜歯。
けがで歯の根っこが割れてしまった場合。
などがあります。

 虫歯や歯槽膿漏は口の中のばい菌(細菌)が原因です。小さな虫歯のうちは削って詰め物をしたり、軽い歯槽膿漏はブラッシングで進行を防ぐことができます。また、上記のような状況でも抜歯以外の治療手段があれば状況に応じて選択します。
 しかし、虫歯や歯槽膿漏が進行すると細菌が体の中にどんどん侵入し、思わぬ腫れや痛み(炎症)を経験することがあります。嘘のような話ですが、この炎症のコントロールがうまくいかないと、炎症で喉や首が腫れて、息ができなくなったり、心臓や肺、脳にまで炎症が拡大したり、全身に菌が回って命を落とすような不幸なケースが今でもあるのです

 われわれ歯科医師はこのようなことを防ぐために、泣く泣く原因となっている歯を抜歯しているのです。本当は抜きたくないのです。でも、それが患者さんの健康に寄与していると判断して抜歯しているのです。本当です。

  さて、少し具体的にわれわれの日常業務である【親知らず】の抜歯についてお話しさせていただきます。

 親知らずは10代後半から20代前半ごろに親に知られることなく生えてくることがその由来だと言われており、正式には第三大臼歯智歯という名前で呼ばれています。前歯から数えて8番目の、一番奥に生える歯です。顎に親知らずの生えるスペースがなくて傾いて生えていたり、歯茎に埋まっていたり、生える方向が通常と異なったりする個人差の多い歯です。先ほど少し触れましたが、様々な弊害があり、抜歯しておいた方がよいと判断されることが多い歯です。

 親知らずに限った話ではありませんが、抜歯は歯の形態や位置により難易度が大きく変わります。歯茎を切ったり、骨や歯を削ったりする必要がある場合は当科のような口腔外科に紹介されることが多くなります。
当科では手術で体への負担が大きいと考えられる場合や、抜歯に恐怖心がある場合は静脈内鎮静法全身麻酔などの麻酔を選択し、なるべく安楽に快適に抜歯ができるような体制を整えています。

 また、何らかの持病(心臓病、糖尿病、透析など)がある場合には、主治医と連携を取り、必要な対策を行ったうえで、医療安全に配慮した抜歯や手術を心がけています。

 一言で【抜歯】といっても、その適応や方法、対策はさまざまです。
 まずは一度ご相談ください。

        
 
(著者:大橋 瑞己 H29.3.31まで在籍)        

 

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