鼻アレルギーの話(1)

            杉尾雄一郎
           
   
          
        耳鼻咽喉科 部長 杉尾 雄一郎
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季節の労働

2月にはいるとマスコミでは花粉症の話題が多くなります。
医学部や看護学校の試験で「鼻アレルギーの3大徴候は?」と聞いても、マスコミのおかげで「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」と答えが返ってきます。「じゃあ、症状が出てくる順番は?」と質問すると、皆、口が滞ります。症状が出てくる順番には理由があります。
 次に、「鼻アレルギーの3大吸入抗原は?」と聞くと、まずスギと答えてしまうでしょう。スギと言ってしまうと次にはブタクサ、カモガヤといった花粉が羅列され正答にはなりません。正答は『室内塵(ハウスダスト)、真菌、花粉』です。
 
 テレビで写し出されるスギの木からの黄色い花粉のオーラは、花粉症の患者にとってはいじめ以外のなにものでもないでしょう。マスコミの取材では、決まりきった医療関係者のコメントが紹介され、素人ながらも考え抜いた花粉対策防具やグッズなどの紹介があり、茶の間の話題となります。中には首をかしげてしまうような非現実的なグッズも登場しますが、それだけお金をかけるのだったら、住む地域を変えたほうが・・・と思ってしまうこともあります。
 
 現在、日本人の4~5人に1人は鼻アレルギーをもっています。その人たちにとっては2月からゴールデンウィークまでは戦々恐々の季節でしょう。「季節労働者」の耳鼻咽喉科医にとっては、一年の中でもっとも多忙な季節となります。しかし、患者さんの手前うきうきしている訳にもいきません。私が在籍していた医局では、医局員の3人に1人は鼻アレルギーをもっていて、薬の治験(臨床試験)は医局員でまかなえたのも現実です。医者も仙人ではありません。
アレルギーの要因

 東京都は環状線に入るディーゼル車の通行税を始めたばかりでなく、環状線の内と外での花粉症の実態調査に乗り出しました。鼻アレルギー診療ガイドラインによれば、慢性副鼻腔炎の減少、軽症化が1960年代に始まるのに反比例し、鼻アレルギーは1965年以降増加し始め、1970年代には数倍になり、現在も増加傾向です。中でも顕著に増加しているのがスギ花粉症です。
 1960年以降、樹齢30年以上のスギ林面積が多くなっていることも事実ですが、ガイドラインは建築様式、建築資材の変化、食生活の変化、ストレス、大気汚染など様々な要因が鼻アレルギーの増加につながっていると解説しています。そもそも、花粉症の言葉の由来はアメリカの枯草熱(hay fever)で、鼻・目の症状や発熱が花粉で引き起こされることが判明しました。
 しかし、今近東京圏で生活する労働者は、アメリカに出張したときは症状が皆無なのに、東京圏に帰ったら2日後には鼻アレルギーの症状を発症します。東京圏ではガイドラインに示す花粉以外の要因が充実していると考えられます。アメリカと日本では生活環境が違うのでしょうか?はたまた、日本人気質や社会が花粉症に追い討ちをかけているのでしょうか?
鼻アレルギーの治療

耳鼻咽喉科医師として、花粉症を含めた鼻アレルギーの治療について解説します。治療法は以下のように分類できます。

1.対症薬物療法
  1)抗アレルギー剤
  2)抗ヒスタミン剤
  3)ステロイドホルモン剤

2.体質改善療法
  1)特異的減感作療法
  2)非特異的減感作療法

3.手術療法
  1)下甲介切除術(レーザー)
  2)三叉神経焼却術

 通年性鼻アレルギーが多かった以前は、減感作療法が盛んでした。事実、減感作は抗体量の減少をもたらしています。しかし、減感作療法は最低1年以上毎週継続して通院が必要です。症状の出ていない時期もです。
 最近は抗原の検索をすると重複抗原が多く、減感作療法だと何種類もの注射を並行してやっていかなければならなくなります。従って、花粉症の増加の中、現在は対症薬物療法が主体となっています。眠気の少ない抗アレルギー剤の季節前投与(花粉飛散の2週間前から内服を開始する)が繁用されており、症状の6~7割程度抑制効果があるとされます。この際、局所点鼻薬を併用したほうがより効果が上がると考えられています。
 しかし、これでも花粉飛散量が多くなると症状を抑えるのが難しく、抗ヒスタミン剤やステロイドホルモン剤の併用が必要となります。耳鼻咽喉科以外の医者で、ステロイド系の筋肉注射で花粉症は1~2回の治療で治ると宣伝しているところもありますが、若年の女性、合併症のある中年から高齢者は、副作用も報告されていることから、受けないほうがよいでしょう。

 花粉症増加に伴い鼻アレルギー罹患は低年齢化しています。罹患年齢が多くなると腫張した鼻粘膜の肥厚が不可逆的となります.鼻づまりがとれなくなったり、臭いが鈍感になった場合などは手術適応と考えてよいでしょう。レーザーの手術は出血が少なく日帰り手術も可能です。しかし、手術もあくまで対症的手段であり、鼻アレルギーの離脱の手段ではありません。現在、鼻アレルギーからの離脱を求めるなら、転地や生活環境を根本的に改善することを考えざるを得ないのが現状といえます。

 

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