嗅覚障害~ニオイの損失は生活を味気ないものに~

            杉尾雄一郎
           
   
          
        耳鼻咽喉科 部長 杉尾 雄一郎
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 ニオイを感じる神経は主として嗅神経です。鼻腔の天蓋に数本の末梢神経を有し、前頭蓋に入り嗅糸にいたる極めて短い神経です。塩素系の刺激臭は副嗅覚系という三叉神経関与の感覚となり、純粋な嗅覚とは異なっています。嗅覚は原始的な一面もあって、順応といって感覚が時間とともに減退します。環境が変わった時嫌なニオイに遭遇しても、この順応のお蔭でいつの間にかいやなニオイを忘れてしまいます。しかし、これが永遠となると大変です。匂いがないと食事など楽しみが失われるだけでなく、くさった食物の判別や、ガスもれなど、直接身体に危害が加わる状況にもなりかねません。
 嗅覚障害の原因は、40%は慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、40%は風邪のウィルス、他薬剤、外傷などがあげられます。日本人の鼻の疾患は1965年を境に慢性副鼻腔炎から鼻アレルギーに第1位が変わってきました。世界有数の喫煙国が生活習慣の見直しと共に鼻疾患も変貌をとげつつあります。
 多くの慢性副鼻腔炎は中高年以上です。喫煙の嗜好が高いせいか、患者さん自身嗅覚障害に気付いていない人も結構います。ニオイは鼻の前で感じる場合と、肺からもどってくる呼気を中心に後ろから感じる場合があります。喫煙者の多くは後ろからの感じが多いと思われます。実際、慢性副鼻腔炎の手術を行う前後に嗅覚検査を実施してみると、手術前は全く感じていない人が大勢います。術後の嗅覚検査では約6割の人が嗅覚の回復をみています。「何年かぶりにニオイを感じて食事がおいしくて」と何人にいわれたことか。その前に少しは自覚してほしいとも思いました。
 近年、鼻アレルギーが増加していて、特に今年は激しい花粉量でつらい思いをした人も多いと思います。鼻アレルギーの鼻閉の時にはニオイは感じません。しかし。鼻閉がとれるとニオイが復活ます。これは嗅神経にニオイを運ぶルートが閉塞するために起こる障害で、呼吸性嗅覚障害とよびます。慢性副鼻腔炎では呼吸性の障害が多いため、鼻手術で換気が良くなればニオイも改善します。高熱や激しい鼻汁の風邪のあと、気がついたらニオイがわからなくなっていた嗅覚障害は、ウィルスによる嗅神経の障害が多く、慢性副鼻腔炎による障害より治りにくいのが現状です。
 現在、嗅覚障害の治療は副腎皮質ホルモンの点鼻や内服が主流で、人工臓器や移植の治療は行われていません。もし、ニオイに異常を感じたら、なるべく早く診断を受け、早期に治療を開始することを勧めます。当科に関する詳細は、こちらからご覧いただけます。
  
  
こちらの特集は神奈川新聞に掲載された『大丈夫ですか?心と体』を当院ホームページ用に再構成したものです
 

 

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